Excelで顧客・案件・日報が乱立し、重複入力や承認まちが発生…。「非エンジニアでも移行できる?」「kintoneとは何か?」「Excelはどう置きかえられる?」という悩みを、やさしい言葉でほどきます。結論はシンプル。kintoneはノーコードで“表”を仕事のしくみに変える土台です。小さく試し、段階導入すれば、短期間でムダとミスをへらせます。
本記事の前編では、「kintoneの基本」「Excelの限界」「メリデメ比較」「置きかえ例(5例)」「導入手順」「費用」「失敗しない権限・ルール」をまとめます。後編では残り5例と連携・定着・FAQ・まとめを扱います。
kintoneとは?わかりやすく(非エンジニア向けの基本)
kintone(キントーン)はサイボウズ株式会社のクラウド型プラットフォーム。ドラッグ&ドロップで「日報」「顧客」「案件」などのアプリを作り、入力・承認・通知・履歴をひとつにまとめられます。コードは不要。情報はスペースでチームごとに整理され、同じ画面を見ながら会話できます。
Excelとの大きな違いは、表(データ)だけでなく、流れ(承認・通知・履歴)まで面倒をみること。だれがいつ何を直したかが自動で残り、抜け・もれが減ります。検索と集計もボタンひとつ。まずは小さく作って、使いながら整えるのがコツです。
なぜExcelをkintoneに置きかえるのか(課題と限界)
Excelは配りやすいぶん、同じ表が乱立し、どれが最新かわからなくなります。複数人が同時にさわれば上書き事故が起き、承認はメールや口頭に流れがち。月次集計のたびに作り直しが生まれ、権限や公開範囲の切り分けもむずかしい。結果、履歴と責任があいまいになり、手戻りがふえます。
kintoneにのせかえると、情報の元をひとつにまとめ、入力→承認→通知→履歴を自動でつなげます。止まりやすい場所が見え、同じミスをくり返さなくなります。
kintoneのメリット・デメリットを5項目で比較
導入しやすさ:ドラッグ&ドロップで即日プロトタイプ。用途をしぼり、言葉をそろえると定着が早まります。
運用の手間:権限・通知・承認・履歴がひとつにまとまり、口頭確認が減少。ただし似たアプリ乱立はNG。命名・責任の分担を決めます。
拡張と連携:テンプレ・プラグイン・外部連携で段階的に拡張。やりたいことを増やしすぎず「痛みの強い所から」直すのが安全。
見える化と記録:変更履歴と承認経路が追え、判断が速くなります。指標はしぼり、見たい人に見える画面を用意。
費用と回収:ユーザー課金で小さく開始。見るだけの人はビュー中心に。古いアプリの整理で見えないコストも下がります。
【5つの具体例|前半】Excel業務をkintoneで置きかえる
1)日報
「日付・担当・作業・時間・気づき」を最初から並べたアプリを用意し、スマホで入力。未提出には自動リマインド。月・人・案件で切り替えれば、残業の山や偏りがひと目で見えます。
2)顧客管理
会社カードに部署・担当・名刺画像・やり取りを集約。案件アプリとゆるく連携すれば、商談履歴を時系列で追えます。外出前の最終確認がすばやく完了。
3)案件管理
「新規→提案→見積→最終→受注/失注」をボタンで進行。期日を入れておくと遅延だけを自動抽出。見積や打合せメモも紐づけ、一元化します。
4)見積
商品マスタから品目をよび出し、単価・割引・税を自動計算。承認通過でPDF出力→送付までスムーズ。案件と一本の流れに。
5)在庫
入出庫の記録をアプリで受けとめ、バーコード/QRで素早く更新。一定数以下になれば通知。棚おろしはスマホで歩きながら入力。
導入手順:小さく試して全社展開(PoC→本番)
まず決める:「重複入力をなくす」「承認の止まりを解消」など狙いを一文で。現状フローを書き出し、言葉の定義を合わせます。
最初の一歩:日報や顧客など回転の早い題材を1アプリだけ。毎日入力され、数日で効果が見えるものにします。
PoC設計:項目は最小、承認は1段、通知は未提出/期限切れ中心に。完璧より学べる速さを優先。
パイロット(2週間):3〜5人で使い、提出率・承認日数・修正回数を毎日チェック。その場で小さく直します。
本番前の整え:閲覧/入力/編集の役割を分け、命名を社内の言い方へ。旧Excelは1〜2週間だけ読み取り専用で残し、差を確認して終了。
30・60・90日:30日でPoC完了、60日で2〜3アプリへ、90日で会議用ダッシュボードを整備。
費用感と料金プラン(運用コストをおさえるコツ)
料金:基本はユーザー課金。アプリ数ではなく「だれが使うか」を見通すと予算が読みやすい。
初期と月額:初期は設計とデータ整形、月額は人数×期間。テストは人数をしぼって負担を軽く。
コスト最適化:見るだけの人はビュー中心、似たアプリを増やさない、短い動画やチートシートで教育時間を短縮。
失敗しないための設定・権限・ルール設計
役割分担:作る人・直す人・見る人を分け、はじめは最小権限から。必要に応じて足します。
命名と項目:社内の言い方で統一。「顧客名・担当・期日」を上に固定、自由記入は下にまとめる。
通知は静かに:未提出・期限切れ・差し戻しの3点にしぼる。履歴は自動記録、会議では同じ画面を見る。
整理の習慣:古いデータは年度で区切って読み取り専用へ。作成→レビュー→公開の3段で安心運用。
→ 後編では、残り5つの具体例と「連携」「定着」「FAQ」「まとめ」をご紹介します。