原因の切り分けから恒久対策まで、実務で使える手順をやさしく解説。
- 「NASに接続できない/共有フォルダに接続できない」まず把握すべき症状と影響範囲
- 今すぐ試す12の復旧手順(Windows 10/11・SMB)—最速チェックリスト
- ネットワーク層の切り分け:物理接続・IP・Ping・名前解決
- Windows 10/11の設定見直し:資格情報・サービス・ファイアウォール
- NAS側の設定見直し:ユーザー権限・共有設定・SMB2/3
- SMB1.0を有効にする前に—重大なリスクと安全な代替策
- ドライブ割り当てと自動再接続の安定化(net use/PowerShell)
- 再発防止:運用ルール・ログ監視・変更管理で「NASに接続できなくなった」をゼロへ
- トラブル事例FAQ:「NASに接続できなくなったのはなぜ?」よくある質問と回答
「NASに接続できない/共有フォルダに接続できない」まず把握すべき症状と影響範囲
ポイント:はじめに症状の言いかたをそろえると、原因の見当が早くつきます。
典型症状の整理:「NASに接続できなくなった」「共有フォルダに接続できなくなった」の具体例
朝いきなり、NASに接続できない、共有フォルダに接続できないという声がふえたとき、あわてて対処をはじめる前に、まずは症状の言いかたをそろえます。言いかたがばらばらだと、原因の見当がつきにくく、むだな切り分けがふえます。たとえば「エクスプローラーのネットワークにNASが見えない」「NASは見えるのに開けない」「ユーザー名とパスワードを入れてもはねられる」「ログオンしたらドライブのZ:に×が出た」など、画面で何がおきているのかを、そのまま短く書き出します。ここで大事なのは、感想ではなく事実のならべ方にすることです。
具体例をいくつか出します。ネットワークの一覧にNASが出てこない場合は、機器どうしが同じ場所(同じネットワーク)にいないか、名前をひろうしくみがうまくはたらいていないかのどちらかに寄ります。見えるのに開けないときは、権限や合言葉(資格情報)の不一致、もしくは通信の出口がふさがっている可能性が高いです。資格情報のエラーが出るときは、同じNASに前のアカウントが残っていたり、入力した名前とパスワードがNASの中のユーザーと合っていないことが多いです。ドライブの自動再接続が切れる場合は、起動の順番、無線の接続タイミング、電源管理の設定、あるいは名前解決のゆらぎが原因になりやすいです。
見えない/見えるが開けない/資格情報エラー/ドライブ再接続失敗の違い
「見えない」…行き先がわからない状態。まずはIPの並び、線、電源を確認。
「見えるが開けない」…鍵や門番の問題。合言葉(資格情報)や権限、ファイアウォールを確認。
「資格情報エラー」…鍵がちがう合図。古い保存ずみ資格の残りや名前の書き方の食いちがいを整理。
「ドライブ再接続失敗」…自動つなぎ直しの不安定。起動順やログオン時の実行、無線の切り替えタイミングを点検。
影響範囲の特定:端末単体か、部署単位か、全社か
次に、影響の広さを早くつかみます。一台だけなのか、同じ島(同じ部署の机)で広がっているのか、全社かで、調べる順番が変わります。一台だけなら、そのPCの中の設定や保存ずみの資格情報に目を向けます。島でそろって出るなら、島につながるハブや無線の親機、VLANのきり方など、近くの機器を見ます。全社で出るなら、NASそのもの、上位のスイッチ、ルーター、名前を教えるしくみ(DNSやWINS)など、中心の機器からあたります。ここで時間をかけすぎないために、同時に何人かに同じ手順で試してもらい、似た結果が出るかを確かめると判断が早まります。
同一セグメント内の複数端末での再現可否テスト
同じならびのIP(例:192.168.1.×)にいるPCを二台えらび、両方見えるか/片方だけ見えるかを確認。たった数分で大きな切り分けができます。
直前イベントの洗い出し:Windows Update/NAS設定変更/ネットワーク機器交換
前日から今日までに何が変わったかを、短く時系列でならべます。Windowsの更新、NASの設定見なおし、スイッチや無線親機の交換、DHCPの範囲変更…。とくに更新後の「NASに接続できなくなった」は、SMBの扱いやゲスト設定のしめつけが疑わしいです。まずは変わった事実を確定し、一つずつ当てていきます。
緊急度の判断基準:業務影響・SLA・締切からの優先度付け
声の大きさではなく期限の近さと金額の重さで順番を決めます。まずは使える道を一本開け、影響が大きい部門から安全な最小の変更で暫定復旧。その後で根本を直し、再発をふせぎます。
今すぐ試す12の復旧手順(Windows 10/11・SMB)—最速チェックリスト
手順1〜3:物理・電源・再起動(NAS/ルーター/スイッチ)
NASの電源ランプと動作音、LANポートの光りかたを確認し、ケーブルをカチッと差しなおします。NAS→スイッチ→ルーターの順に状態を見て、必要ならNASのみ短い再起動を実施します。
手順4〜6:IP・セグメント・疎通確認(ping/445到達)
PCのipconfigで自分のIP、NAS側の管理画面や本体表示でNASのIPを確認。並びが合えば ping NAS_IP、つづけて Test-NetConnection -ComputerName NAS_IP -Port 445 で共有の入口(TCP 445)を確認します。
ipconfig/Test-NetConnection/arp の基本
ipconfig
Test-NetConnection -ComputerName 192.168.1.50 -Port 445
arp -a
手順7〜9:名前解決・資格情報・サービス状態の確認
\\NAS名\共有で失敗したら、\\NASのIP\共有を直打ち。資格情報マネージャで古い鍵を片づけ、必要なら net use * /delete で既存セッションをいったん空にします。Workstation(LanmanWorkstation)/Server(LanmanServer)が実行中かもチェック。
コマンド例:
net use * /delete
net use Z: \\192.168.1.50\share /user:USER /persistent:yes
手順10〜12:NAS権限・SMB2/3設定・ファイアウォール例外
NASの最小権限を整理し、SMBは2/3を有効・1は無効を基本に。挙動確認のため短時間だけ門番(ファイアウォール)を止めて切り分け、必要なTCP 445だけ最小例外で開けます。
TCP 445 の通過確認と最小例外化
Test-NetConnection -ComputerName 192.168.1.50 -Port 445
ネットワーク層の切り分け:物理接続・IP・Ping・名前解決
物理層:リンクLED/ポート変更/ケーブル劣化の確認
まずは線と光。ランプが点灯・点滅していれば最低限は通電。光らないときは差しこみやケーブルの劣化を疑い、交換して試すのが早道。スイッチの別ポートでも確認します。
IP層:固定IPかDHCPか、同一サブネットの一致
PCとNASの住所(IP)が同じ並びかを確認。固定IPなら重複、DHCPなら配布範囲の変更を疑います。
ルーターのDHCPリース/NASの管理画面でのIP確認
ルーターのDHCPリース一覧でNASの割り当てを確認。NASの管理画面で現在のIP/ゲートウェイ/DNSをそろえるだけで直る例は多いです。
疎通:ICMPとSMBポート到達性の分離検証
ping NAS_IPはあいさつ、Test-NetConnection -Port 445は共有のドア確認。二つをセットで見ると、通信路の問題か上位設定の問題かがはっきりします。
ping NAS_IP/Test-NetConnection -Port 445
ping 192.168.1.50
Test-NetConnection -ComputerName 192.168.1.50 -Port 445
名前解決:DNS/NetBIOS/WINS の優先順位と一時回避
IP直打ちで入れるのに名前で失敗するなら名前解決のゆらぎ。まずはIPで作業再開し、落ちついてからDNSを整えます。必要ならPCのhostsへ一時登録。ただし最終はDNSへ正式登録が王道です。
hosts一時登録/mDNS・LLMNR の考慮
hostsはすぐ効きますが台数がふえると管理がばらけます。DNSを主役にしておくと「共有フォルダに接続できなくなった」が出にくくなります。
Windows 10/11の設定見直し:資格情報・サービス・ファイアウォール
資格情報の衝突を解消:保存ずみ資格の削除と正しい登録
NASに接続できない とき、まず疑うのは古い鍵。資格情報マネージャでNAS関連を整理し、\\IP\共有名へ正しいユーザーで入り直します。
資格情報マネージャ/cmdの net use コマンド
net use * /delete
net use Z: \\192.168.1.50\share /user:USER /persistent:yes
共有関連サービス:Workstation/Server/TCP/IP NetBIOS Helper
共有の裏方サービスが止まっていると接続はできません。Workstation/Server は実行中かを確認。必要なら自動に直し、再起動で動作を見ます。
ファイアウォール・セキュリティ製品:一時停止で切り分け→最小の例外へ
短時間だけ門番を止めて切り分け、原因ならTCP 445だけの最小例外にします。
共有ポリシー:パスワード保護共有の影響とおすすめ設定
更新後にパスワード保護共有が有効になるとゲスト入場が止まりがち。NAS側にユーザーを作り、PC側はそのユーザーで接続します。
SMBクライアント設定:SMB2/3を前提にした動作確認
Get-SmbConnection
Dialect が 2.x/3.x なら安全側。SMB1しか話せない古いNASは期間限定・範囲限定でしのぎ、早めに更新を計画します。
NAS側の設定見直し:ユーザー権限・共有設定・SMB2/3
アカウント運用:個別ユーザー+最小権限(読取り/更新の切りわけ)
NASに接続できない とき、NASの中の人の名まえと役わりがあいまいだと、正しい鍵を持っていても入れません。だれがどの共有を使うかを洗い出し、個別ユーザーと部署ごとのグループで整理。権限は最小から必要に応じて足します。
共有フォルダのアクセス権限:共有許可とNTFS/ACLのそろえ方
入口(共有の許可)と中身(NTFS/ACL)の二だん構えを同じグループでそろえるのがコツ。ちぐはぐな権限は「見えるが開けない」「保存でエラー」の元です。
プロトコル設定:SMB2/3有効化とSMB1無効化の基本方針
Windows 10/11ではSMB2/3が標準。NAS側で2/3を有効、1は無効が基本。やむをえずSMB1を使うなら範囲限定・期間限定で。
ファームウェアと時刻同期:不具合修正とずれ防止
NASのファームを安定版の最新に。NASとPCの時刻ずれは認証失敗の静かな犯人。NTPで合わせましょう。
監査とログ:失敗イベントの読み方と再発防止の記録
NASのログで「いつ・だれが・どこで・どう失敗」を把握。短い社内メモに残すと、次回の初動が速くなります。
SMB1.0を有効にする前に—重大なリスクと安全な代替策
注意:SMB1.0の常用は高リスク。基本はSMB2/3を使いましょう。
SMB1.0の脆弱性とコンプライアンス上の問題
SMB1.0は古く、暗号や確認があらくねらわれやすい入口。ネットワーク全体をさらし、監査でも不利です。
どうしても必要な場合の暫定対応:範囲限定・期間限定・閉域化
対象端末と共有を小さな島に分け、時間と権限をしぼり、作業後は必ず戻す運用に。
代替策:NASのSMB2/3対応化/機種設定見なおし/アップグレード
まずはSMB2/3を有効にし、ファームを安定版の最新へ。相性モードは外して、初期値から必要分だけ足すと整います。
段階的移行計画:影響端末の洗い出し→テスト→切りかえ→検証
影響端末を一覧化→小規模テスト→本番切りかえ→結果の記録で次回短縮。SMB1.0から遠ざかるほど日々が安定します。
ドライブ割り当てと自動再接続の安定化(net use/PowerShell)
永続的マッピング:Z:などの固定化と /persistent:yes
よく使う共有を固定のドライブ文字に。再起動後も同じ道で開けるようにして、朝のゆらぎをへらします。
net use Z: \\IP\共有 /user:USER /persistent:yes
net use Z: \\192.168.1.50\share /user:USER /persistent:yes
net use Z: /delete
PowerShellスクリプト化:再接続・エラー時リトライ
ログオン時に自動再試行を入れると、無線や起動順のズレにも強くなります。ユーザー名や共有名は冒頭にまとめ、差し替えを楽に。
ログオンスクリプト/GPO適用:全社配布で属人化を解消
Active DirectoryならGPOのログオンスクリプトに。非ADでもスタートアップで十分。設定をひとまとめ管理にして全員の動きをそろえます。
よくあるエラーコードの対処:53/67/86 ほか
53…行き先不明(IP/名前解決/門番)。67…共有名ちがい/未作成。86…鍵ちがい(資格情報を整理→正しいユーザーで再接続)。
再発防止:運用ルール・ログ監視・変更管理で「NASに接続できなくなった」をゼロへ
運用基準:アカウント命名・権限付与・棚卸しサイクル
ユーザー名の書き方をそろえ、権限は最小から開始。四半期ごとに棚卸しで古い鍵を掃除します。
監視ポイント:疎通・認証失敗・容量ひっぱく・SMART異常
IP疎通の記録、認証失敗の気づき、容量とSMARTの早期発見で、止まりを事前にふせぎます。
変更管理:更新前の影響評価とロールバック手順
予定→影響→元に戻す手順を事前に用意。スクショとバージョン、共有・権限表を保存し、小規模テストから本番へ。
バックアップとBCP:スナップショット/世代管理/復旧訓練
スナップショットの世代管理と復旧訓練で、誤消去やトラブルからの戻りを体で覚えます。
手順書と教育:チェックリスト化と引きつぎ
今回の流れをチェックリスト化。新メンバーは短いオンボーディング+実機で反復。ひらがな多めで伝わる言葉に。
トラブル事例FAQ:「NASに接続できなくなったのはなぜ?」よくある質問と回答
Q1:Pingは通るのに共有フォルダへ入れないのはなぜ?
道の途中は生きていても共有のドア(TCP 445)が閉まっている状態。Test-NetConnection -ComputerName NAS_IP -Port 445で確認。開いているのに入れないなら資格情報の食いちがいが典型です。
Q2:Windows Update のあとに「NASに接続できなくなった」。最初に何を見る?
パスワード保護共有の有効化でゲスト入場が止まることが多いです。NASにユーザーを作成し、そのユーザーで接続。必要に応じて保存ずみ資格の整理と、\\IP\共有の直打ちで回避。
Q3:同じ部署なのに、特定ユーザーだけ「共有フォルダに接続できない」。どこを疑う?
アカウント側かPC側かを交差検証。NASのグループ所属・共有権限・PCの古い資格情報の三点を見る。パスワード期限やロックも要確認。
Q4:SMB1を使わずに復旧したい。できる?
できます。基本はSMB2/3へ合わせ、ファームを安定版の最新へ。Get-SmbConnectionでDialectを確認し、古い装置は小さな閉じた島で一時運用に。
Q5:再起動のたびにドライブが切れる。自動でつながらないのはなぜ?
起動順や無線の立ち上がりが追いついていない可能性。net useで永続マッピング、ログオンスクリプトで再試行を入れると安定します。