【リード文】
命名規則が整えば、次に目指すべきは「自動化」と「標準化」です。第4回では、パソコン台帳やIT資産管理の運用を自動化し、企業全体の経営効率を高める方法を解説します。kintoneやMicrosoft 365を活用した実践事例も紹介します。

第4回:自動化と標準化の実践編 ― 命名規則を“動かす仕組み”へ

はじめに ― 命名規則の次は「仕組み化」

第3回では、命名規則を現場で定着させる方法をお伝えしました。第4回となる今回は、その命名規則を「人が守るルール」から「自動で動く仕組み」へ進化させる方法を紹介します。
命名規則が整うと、パソコン台帳やクラウドシステムとの連携が容易になり、自動化の基盤ができあがります。ここからが、IT資産管理の本当の効率化のスタートです。

1. 自動化の第一歩 ― 命名データを活かす

命名規則の魅力は「構造化されたデータ」であることです。つまり、1つの名前の中に、連番・区分・年月・メーカー・購入区分といった情報が組み込まれており、システムがそれを自動で読み取れるということです。
この特性を活かすと、台帳登録や管理業務の多くを自動化できます。

たとえば、kintoneにパソコン台帳アプリを作り、登録されたパソコン名から自動的に「購入年月」や「メーカー」を分解して表示させることが可能です。入力ミスを減らし、登録スピードも向上します。Excelでの手作業に比べ、約3分の1の時間で完了します。

2. クラウド連携で生まれる“動く台帳”

次のステップは、命名規則とクラウドシステムを連携させることです。
たとえば、Microsoft 365のデバイス管理やIntune、SharePoint、Power Automateなどと組み合わせれば、PCの登録・削除・状態変更が自動で台帳に反映されるようになります。

これにより、IT担当者は更新漏れや重複登録に悩まされなくなります。
命名規則が正しく設計されていれば、クラウド側でも「命名のルール=検索条件」として活用できるため、フィルタリングやレポート生成も容易です。
たとえば、「2023年以降に購入したDELL製ノートPC」を一瞬で抽出できるようになります。

3. Power Automateで作業を自動化する

Power Automate(旧Microsoft Flow)を使えば、命名規則と台帳の連携をより深めることができます。
具体的には次のような自動化が可能です。

  • 新しいPC名が登録されたら、自動で台帳にレコードを追加
  • 保証期限が近いPCを自動でTeams通知
  • 命名規則に沿わない名前が入力された場合に自動警告

これらを組み合わせれば、日常業務の中で「命名ルールが守られていない」状態をシステムが自動で検知し、担当者に知らせることができます。
まさに“ルールが自走する状態”を作り出すことができるのです。

4. 標準化 ― 他部署・他拠点へ展開する

自動化の次は標準化です。つまり、部署や拠点が変わっても同じ運用ができる状態をつくることです。
命名規則を中心に、台帳フォーマット、クラウド設定、アプリ構成をテンプレート化します。
これにより、新しい拠点を立ち上げるときも、「台帳アプリをコピーしてルールを適用するだけ」で運用を開始できます。

ここで重要なのは、標準化を「縛り」とせず「安心」として共有することです。
ルールが統一されていると、引き継ぎやヘルプデスク対応もスムーズになります。
異動してきた社員も迷わず運用に参加でき、企業全体のIT資産管理レベルが底上げされます。

5. DXクリエイションでの応用

命名規則の自動化・標準化は、DXクリエイションの土台です。
御社の「経営効率とDXクリエイション」という理念を実現するためには、現場データが正確でなければなりません。
命名規則で整理された資産データを自動で分析・可視化できれば、経営の意思決定が早くなり、トラブル対応の時間も短縮されます。

たとえば、Power BIと連携し、命名データをもとに以下のようなグラフを作成できます。

  • 購入年度別のPC台数と減価償却進行率
  • 部署別のリプレイス計画一覧
  • メーカー別の平均故障率

これらのデータは、単なる管理情報ではなく「経営判断の武器」となります。
命名規則をベースにしたIT資産データの活用こそが、経営効率の最大化に直結します。

6. 自動化・標準化がもたらす文化変化

命名規則を自動化・標準化すると、組織文化にも変化が生まれます。
「誰かがやる」ではなく「システムが回す」という発想が根づきます。
社員が命名を意識しなくても、システムが正しい形に整えてくれる。
それは、人の作業負担を減らすだけでなく、経営層の安心感にもつながります。

やがて、「命名規則=経営の秩序」という意識が社内に定着します。
この変化こそが、ITサポートやDX推進の最も価値ある成果です。

まとめ ― 仕組みが会社を動かす

第4回では、命名規則をもとにした自動化と標準化の実践法を紹介しました。
手作業を減らし、システムがルールを維持し、全社で統一された台帳を運用する。
それは「IT管理の効率化」を超えて、「経営の自動化」への第一歩です。

最終回となる第5回では、この命名規則がもたらす「経営と人材育成への波及効果」について掘り下げます。
命名規則を通じて、経営・現場・ITがどのように一体化していくのか。その本質をお伝えします。