「SharePoint Onlineは何が便利なのか、結局よく分からない…」と感じていませんか。ファイルサーバーとのちがいや、業務改善にどうつながるのかを上司や現場にうまく説明できず、もやもやしているひとも多いはずです。

じつは、SharePoint Onlineはリアルタイム共同編集バージョン管理リモートワークとの相性のよさなどを組み合わせることで、情報共有と業務フローを大きく効率化できるツールです。

この記事では、「SharePoint Onlineは何が便利?」という疑問にこたえながら、今日から試せる10の活用術をていねいに紹介します。ひとり情シスや情報システム担当のかたが、社内に提案しやすいように、むずかしい専門用語はできるだけさけて解説していきます。


SharePoint Onlineは何が便利?基本機能とファイルサーバーとの違い

SharePoint Onlineは、かんたんに言うと「会社やチームのためのクラウド上の共有スペース」です。ファイルをしまっておく場所というだけでなく、仕事の情報をまとめたり、やりとりのきっかけにしたりするための土台になります。エクセルやワード、パワーポイントなどのファイルを安全にあずけておき、だれでも同じ場所から見られるようにできるところが大きなポイントです。

よく比べられるのが、社内のファイルサーバーや共有フォルダです。今までのファイルサーバーは、会社のネットワークの中からしかアクセスできず、外出先や在宅からつかうにはVPNなどの設定がひつようでした。SharePoint Onlineはクラウドなので、インターネットにつながるところなら、家からでも客先からでも同じようにファイルにアクセスできます。これだけでも、リモートワークのしやすさはかなりちがってきます。

また、ファイルサーバーでは「どこに何を入れるか」はフォルダ名と個人のセンスしだいになりがちです。SharePoint Onlineでは、ライブラリ列の設定タグ検索機能をつかって、「さがしやすい状態」をつくりやすくなっています。キーワード検索で必要な資料をすぐ見つけられるので、「あの資料どこに入れたっけ?」という時間をへらせるでしょう。

さらに大きなちがいが、ブラウザだけでそのままファイルの中身を見たり編集したりできることです。ローカルに保存して開きなおす手間がへるので、ちょっとした修正や確認もすばやく行えます。ファイルに対してコメントをつけたり、変更の履歴を自動で残したりできるため、「だれが、いつ、どこを変えたのか」もあとからふりかえりやすくなります。

このように、SharePoint Onlineは「ファイルを置く箱」というよりも、仕事の情報を管理しながら、チームの業務をすいすい進めるための土台として便利なしかけがたくさん用意されているツールだと言えます。ここをおさえておくと、「SharePoint Onlineは何が便利なのか?」という質問にも説明しやすくなるはずです。


SharePoint Onlineで業務改善が進む5つの便利ポイント

SharePoint Onlineが業務改善に役立つ理由は、たくさんの細かい機能が積み重なっているからです。その中でも、特におさえておきたいポイントを5つにしぼって見ていきましょう。

1つめは、リアルタイム共同編集です。ワードやエクセルのファイルをSharePoint Onlineに置いておけば、複数のひとが同じ時間に同じファイルを開いて編集できます。だれがどの部分を直しているのか色つきで見えるので、修正がぶつかりにくくなります。メールで何度もファイルを送りあって「どれが最新かわからない」という状態からぬけだせるので、会議資料づくりや提案書づくりのスピードがかなり変わってくるでしょう。

2つめは、バージョン管理です。SharePoint Onlineは、ファイルを上書きするたびに自動で「バージョン」を残していきます。まちがえて消してしまった場合でも、過去のバージョンに戻すことができますし、「前回のたたき台と今の案のちがい」を確認することもかんたんです。だれが、いつ、どんな変更をしたかが残るため、あとからふりかえりやすいのも安心材料になります。

3つめは、すぐれた検索機能です。ファイル名だけでなく、文書の中身もふくめて検索できるので、「タイトルはおぼえていないけれど、こういう内容の資料がほしい」というときに力を発揮します。部署名や案件名などの情報を列として持たせておくことで、「このお客さま関連の資料だけをしぼりこむ」といった使い方もしやすくなります。

4つめは、リモートワークへの強さです。ブラウザとインターネットがあればどこからでもアクセスできるので、在宅勤務や外出中の対応がぐっとやりやすくなります。VPN接続がうまくいかずに作業が止まる、といったトラブルもへりやすくなるでしょう。スマホやタブレットからも閲覧ができるので、現場で確認してすぐにコメントだけ入れておく、といった使い方もできます。

5つめは、Microsoft 365のほかのツールとの連携です。TeamsのチャンネルとSharePointのライブラリはつながっているので、Teams側からファイルを開いても中身はSharePointに保存されています。OutlookのメールからSharePointのリンクをそのまま共有したり、OneDriveと組み合わせて個人作業とチームの共有を切りかえたりと、仕事の流れの中で自然にSharePointをつかえるようになるのも大きな強みです。

この5つのポイントが組み合わさることで、「ファイルがバラバラで仕事がとどこおる」という状態から、「いつでもどこでもチームで進められる」状態に近づいていきます。これが、SharePoint Onlineが業務改善の土台としてえらばれる一番の理由と言えるでしょう。


今日からできる!SharePoint Onlineを使った業務改善の10の活用術

ここからは、「業務改善」と聞くとハードルを高く感じるひとでも、今日から少しずつ取り入れられる具体的な使い方を10こ紹介していきます。むずかしい設定は後回しにして、「これならうちの会社でもできそう」と思えるイメージを持ってもらうことがねらいです。

1つめは、「部署ごとのチームサイト」をつくることです。総務部、営業部など、部署ごとにサイトを用意し、そこに日々つかう書式やマニュアル、共有したいお知らせをまとめておきます。メールで流して終わりではなく、「あとから見に行ける置き場」をつくるだけでも、「あのフォーマット送ってください」という問い合わせがへっていきます。

2つめは、「案件ごとの資料置き場」をSharePoint上につくることです。お客さまやプロジェクトごとにフォルダを分け、見積書、提案書、議事録などを一か所にあつめておけば、新しく担当になったひともすぐに状況を追いかけられます。ここでも、ファイルサーバーではなくSharePointにまとめることで、リモートワーク中でも同じ情報にアクセスできるようになります。

3つめは、「会議の議事録をリアルタイム共同編集で書く」ことです。オンライン会議中にOneNoteやWordをSharePoint上で開き、出席者全員でメモを書いていきます。だれか一人があとからまとめるのではなく、その場で全員が内容を確認しながら書けるため、抜けもれが減り、会議後の共有もスムーズになります。

4つめとして、「テンプレート集のライブラリ」をつくる方法があります。経費精算書、休暇申請書、稟議のたたき台など、よくつかう書式をSharePointにまとめておくことで、どのバージョンをつかえばよいか迷わなくなります。最新版だけが見えるようにしておけば、「古いフォーマットで出しなおし」という手戻りもへっていくでしょう。

5つめは、「社内マニュアルやナレッジの集約」です。紙のマニュアルやバラバラのエクセルで管理されている手順を、SharePointのページとしてまとめていきます。画像やリンクも貼れるので、見ながらそのまま作業しやすい形にできますし、更新もブラウザ上でさっと行えます。

6つめは、「お客さまとのファイル共有」につかう方法です。メールに大きなファイルを何度も添付するかわりに、SharePointの共有リンクを送る形に切りかえます。期限つきや閲覧のみでリンクを発行できるので、セキュリティを保ったまま、やりとりの手間をへらせます。

7つめは、「社内の問い合わせ対応を整理する」使い方です。よくある質問とその答えをSharePointにまとめておき、「まずここを見てください」と案内できるようにします。今まで個別にチャットや電話で答えていた内容を、少しずつ記事として残していくイメージです。

8つめは、「かんたんな申請フローの入り口」としてつかう方法です。たとえば、備品購入の依頼やアカウントの発行依頼などの入力フォームをSharePoint上のリストとして用意し、そこに書きこんでもらうようにします。受付の窓口が一か所にまとまるだけでも、「だれに連絡すればよいのか分からない」という声がへっていきます。

9つめは、「人事や総務からのお知らせの掲示板」としてつかうパターンです。給与明細や住所変更の案内など、メールだと流れてしまいやすい情報も、SharePointのページにまとめておけば、あとから見直せます。Teamsのチャンネルと連携して、「新しいお知らせが出ました」と通知を飛ばすこともできます。

10こめは、「教育用のコンテンツ置き場」としての活用です。新人向けの研修資料や、社内勉強会のスライド、動画などをSharePointにためておき、「学びの図書館」のようにしていきます。これにより、教える側も毎回いちから資料を探さなくてすみますし、学ぶ側も自分のペースで復習できるようになります。

これらの活用術は、どれも特別な開発スキルはひつようありません。少しずつSharePoint Onlineに移していくだけで、「気がついたら業務改善が進んでいた」という状態に近づいていけます。


リモートワークでこそ活きるSharePoint Onlineの便利な使い方

リモートワークや在宅勤務がふえてくると、「社内の情報にどうやって安全にアクセスするか」が大きなテーマになります。SharePoint Onlineは、まさにこの場面で力を発揮します。クラウドにファイルを置いておくことで、会社にいない日でも、同じ資料を見ながら打ち合わせができるようになるからです。

たとえば、営業担当者が外出先のカフェからタブレットでSharePointのサイトを開き、その場で最新の提案書をひらいてお客さまと話す、といった使い方ができます。いちど会社にもどってから印刷して持っていく、といった手間はもういりません。変更があれば、その場でコメントを入れておき、社内のメンバーにすぐ共有することもできます。

在宅勤務でも同じです。ファイルサーバーにVPNでつなごうとして、うまくいかずに作業が止まる、というストレスから解放されます。ブラウザでSharePointにつなぎ、Teamsの会議で画面共有をしながら、資料をリアルタイムで直していく、といった仕事のしかたが当たり前になっていきます。これにより、場所にしばられない働きかたを現実的な形で支えることができます。

また、SharePointのコメント機能は、リモートワークのコミュニケーションにも役立ちます。メールやチャットだけでは伝わりづらい指示も、「この部分のここの表現を変えてほしいです」といった形で、ドキュメントの中に直接メモを残せます。あとから見たひとも意図を理解しやすく、やりとりの回数をへらせるでしょう。

もちろん、外からアクセスできるということは、セキュリティにも気をつけるひつようがあります。SharePoint Onlineでは、アクセス権限を細かく分けたり、社外ユーザーには特定のフォルダだけ見せるといった設定もできます。こうした機能をうまくつかうことで、「リモートワークでも安全で便利な情報共有」のバランスをとっていくことができます。


バージョン管理とセキュリティで業務リスクを減らす方法

業務改善を考えるとき、「効率」と同じくらい大事なのが「リスクをへらすこと」です。SharePoint Onlineのバージョン管理とセキュリティのしくみは、このリスクを下げるためにもとても役立ちます。

バージョン管理のいちばん分かりやすいメリットは、「まちがえたときに戻れる」という安心感です。だれかが重要な部分を消してしまったり、書き換えてはいけないところを直してしまった場合でも、以前のバージョンに戻すことができます。これにより、「万が一の人まちがい」がすぐに取り返しのつくものになり、現場の心理的な負担もやわらぎます。

また、「だれが、いつ、どんな変更をしたのか」が履歴として残るので、あとから確認しやすくなります。たとえば、契約書の内容がいつのタイミングで変わったのか、どの担当者の判断だったのか、といった情報を追うことができます。これは、監査やコンプライアンスの観点からも大きな安心材料になるでしょう。

セキュリティ面では、SharePoint Onlineは「見せるひとをしぼる」しくみが得意です。部署ごと、役職ごとにグループをつくり、そのグループにだけサイトやライブラリを見せる、といった設定ができます。個人情報をふくむ資料や、社外秘レベルの情報は、見られるひとをしっかりしぼっておくことで、情報もれのリスクを大きくへらせます。

ファイルの共有リンクについても、期限をつけたり、閲覧だけにしたり、ダウンロードを制限したりといった設定ができます。これにより、「一度共有したリンクがずっと生きていて、あとからだれに見られるかわからない」といった不安をおさえることができます。必要なときだけ安全に情報を出し、用がすんだらしめる、という運用がしやすくなります。

このように、バージョン管理とセキュリティの機能をうまく組み合わせることで、「人まちがい」や「情報もれ」といった業務リスクをおさえながら、SharePoint Onlineを安心して活用していくことができます。


失敗しないSharePoint Online導入と運用設計のポイント

SharePoint Onlineはとても便利なツールですが、なんとなくつかい始めると「サイトがたくさんできてごちゃごちゃしてしまった」「だれも更新しなくなった」という状態になりがちです。そうならないためには、導入前に少しだけ考えておくポイントがあります。

まず大切なのは、「小さくはじめる」ことです。いきなり会社全体のすべての業務をSharePointにのせかえようとすると、現場も管理側もつかれはててしまいます。最初は、総務の書式集や、特定のプロジェクトの資料置き場など、範囲をせまくしてスタートするとよいでしょう。そこで成功体験ができてから、すこしずつ広げていくイメージです。

つぎに、「ルールをシンプルに決めておく」ことが重要です。フォルダのきり方、ファイル名のつけ方、どんな資料をどのサイトに置くのか、といった基本ルールをあらかじめ決めておきます。ルールはむずかしくしすぎず、「だれが見ても分かる」レベルにしておくのがポイントです。ルールをかんたんな文書や図にしてSharePoint上に置いておくと、あとから入ってきたひとも迷いにくくなります。

権限の設計も、最初に考えておきたいところです。個人ごとに「このひとはここまで見られる」と細かく設定しすぎると、あとから管理が大変になります。基本は、部署や役割ごとのグループをつくり、そのグループ単位でアクセス権をつけていくと運用しやすくなります。人事異動があっても、グループのメンバーを入れかえればよいだけになり、管理の手間もへります。

そして、導入時には「説明」と「練習の場」を用意することも大切です。SharePoint Onlineがどんなふうに便利になるのかを、実際の画面を見せながら短い時間で説明します。そのうえで、かんたんな操作をいっしょにやってみる時間をつくると、「なんとなくこわいツール」から「つかってみようかな」と感じてもらいやすくなります。

最後に、「管理と改善の担当」を決めておくと安心です。サイトの整理やルールの見直しをだれも担当していないと、いつのまにか古い情報がそのまま残りつづけてしまいます。月に一度など、定期的に見直す時間をとり、「ここはつかわれていないので整理しよう」「このフォルダは名前を変えよう」といった小さな改善を続けていくと、SharePoint Onlineはどんどんつかいやすい環境になっていきます。


よくある質問(FAQ)

Q
SharePoint Onlineとファイルサーバーはどう使い分ければよいですか?
A
社内だけで完結する一時的な作業ファイルはファイルサーバー、社内外やリモートワークで共有したい情報はSharePoint Onlineというように分けると整理しやすいです。とくに、リアルタイム共同編集やバージョン管理を活かしたい資料は、SharePointにまとめていくと業務改善の効果が出やすくなります。
Q
SharePoint Onlineを導入するとき、最初に何から始めればよいですか?
A
いきなり全社展開はせず、総務の書式集や特定プロジェクトの資料置き場など、小さな範囲から試すことをおすすめします。そのうえで、フォルダやファイル名のルール、アクセス権限の考え方をシンプルに決めておくと、あとから広げやすくなります。
Q
SharePoint Onlineだけで業務改善は十分でしょうか?
A
SharePoint Onlineだけですべてを解決する必要はありません。Teams・Outlook・OneDriveなどMicrosoft 365のツールと組み合わせて、「使う場所」と「コミュニケーション」をつなげることで、より大きな業務改善効果が出てきます。まずはSharePointを情報の土台として整えるところから始めるとよいでしょう。

まとめ:SharePoint Onlineを業務改善のインフラとして定着させよう

ここまで見てきたように、SharePoint Onlineはただのファイル置き場ではありません。リアルタイム共同編集、バージョン管理、強力な検索、リモートワークへの対応、セキュリティ設定など、日々の業務をすいすい進めるための便利なしかけがつまっています。

最初から完ぺきに使いこなすひつようはありません。まずは、「部署の書式をSharePointにまとめる」「会議の議事録だけは共同編集で書いてみる」といった小さな一歩からはじめてみてください。その一歩が、ファイル探しの時間をへらし、ムダなメールのやりとりをへらし、結果として残業時間の削減やミスの減少にもつながっていきます。

SharePoint Onlineは、会社の「情報インフラ」として長くつきあっていけるツールです。業務改善のアイデアが出てきたら、「それをSharePointで仕組みにできないか」と考えてみることで、属人化していた仕事を少しずつ見える化し、チーム全体で分かちあえる形に変えていくことができます。

「SharePoint Onlineは何が便利なのか、いまいち分からない」と感じていたとしても、本記事で紹介したポイントと活用術をおさえれば、上司や現場にも説明しやすくなるはずです。自社の業務に合いそうなところから、ぜひ今日できるところだけでも試してみてください。そこから、あなたの会社なりのSharePoint Online活用ストーリーが始まっていきます。